書評:『国防の真実こんなに強い自衛隊―国防の真実』井上和彦/双葉社


国防の真実こんなに強い自衛隊―国防の真実

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書評/ルポルタージュ

色々な意見のある自衛隊だが、今時点ではまだその存在は必要な時代だと私は思っている。ただ、現状のあり方がよいのかどうか、その点については色々な疑問もあるのだが。

今後国家としての戦争が行われる可能性がどれだけあるのかは未知数だが、地球に国家が200も存在し、世界組織に権限がない現時点では、国家のレベルで国民を守るための組織が必要だ。望ましくない侵略を受ける可能性があるのであれば、それに対する防衛力を持っていることを示すことは意味がある。

本書では陸・海・空のそれぞれの自衛隊組織についての実態を示し、その戦力の内容を解説している。多少戦力の配分に偏りがあるものの、日本の自衛隊は誰が見ても立派(すぎるぐらい)な軍隊組織だ。日本各地に駐留している米軍とあわせると、かなりの軍事的な集中地域といってもいいかもしれない。

軍事関連の書籍によくありがちな傾向として、「こんなところがすごいんだぜ!」傾向がついつい文章を書いているうちに盛り上がってきてしまっているものが多いと思うのだが、その例外にもれず、本書もその傾向が強い。各自衛隊の装備を紹介している各章では、「日本の軍事力はこんなにすごい、中国や北朝鮮など目ではない」といった類の文章がだいぶ幅を利かせてしまっていて少々読んでいてわずらわしく感じてしまうほど。この点は少々残念ではある。

ただ、本書のよい点はそうした軍事面だけで自衛隊を扱っていないところだろう。ここ最近は主要な活動となってきているPKOやテロ特措法関連の活動、サイバーテロに対する備え、武器輸出や戦没者との関わりなど、自衛隊を取り巻く様々な要素について扱っている点は本書の価値ある点といえる。

自衛隊の実態や、自衛隊を取り巻く様々な要素について理解することなく自衛隊の問題を深く考え、判断することはできない。この数年で、改憲問題など自衛隊をめぐっての論争は大きな局面を迎えている。改憲問題をどうかんがえるのか、その大きな要素の1つとして、自衛隊について考えるきっかけとして本書は役立つ1冊だと思う。