書評:『MBA講義生中継 人材マネジメント戦略』村中靖/TAC出版


MBA講義生中継人材マネジメント戦略

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書評/ビジネス

内容的にも、そして装丁的にも、良くも悪くも大学のテキストそのもの。
この類の書籍は通常大ヒットするようなものではない。そのため、限られた人たちによって形成される市場にいかにリーチし、購入してもらうかということとなる。そういう意味で、TACがTAC出版という形で一般の書店に流通することが可能な形態でこの本を出版したという取り組みには敬意を表したい。ただ、だからこそこの装丁は残念。ページ前面を等幅フォントで埋め尽くすような体裁は非常に読みづらい。文章自体もいわゆる「テキスト的な書き方」であることもあるのだが、同じ文章でももう少し工夫してくれればかなり読みやすくなったのではと思わずにはいられない。そういった意味では、新書などの体裁を色々と参考しながら今後、改善を進めていってほしいと思う。
内容としては、人材マネジメントという括りで扱われる全般を理論として解説した一冊。人材マネジメント自体について、経営戦略との関連、人材の獲得・育成、そして評価・処遇や配置・異動、さらには退出までのすべての過程と項目について網羅したまさに人材マネジメントの入門書として位置づけられる。大学レベルでこのような人材マネジメントを扱うことはないと思われ、そういう意味でもMBAや社会人大学向けの内容といえるだろう。
著者は人材コンサルティングを長らく勤めた経歴の持ち主のようだが、本書では実例にはあまり触れられていない。確かに人材マネジメントの現場は個々の企業ごとに個別の事情があるだろうと思われ、学問的に扱うにはそこまで扱っているとまとめきれないといった事情もあるのだろう。ただ私としては、"講義生中継"とタイトルを打つのであれば、積極的にそうした内容を含めた書籍化にチャレンジしてほしかったとも思う。とはいえ、人材マネジメントを体系的にあつかった書籍としては優れた一冊である。