書評:『経営の大局をつかむ会計〜健全な"ドンブリ勘定"のすすめ』ー山根節/光文社新書197

経営の大局をつかむ会計 健全な”ドンブリ勘定”のすすめ
山根 節
光文社 (2005/03/17)
売り上げランキング: 8205

損益計算書(PL/Profit & Loss Statement)と貸借対照表(BL/Balance Sheet)と聞いただけで簿記に対する意味不明さが思い浮かんで拒否反応が出るような人間なのですが、この本を読んでちょっと興味を持った企業のPLとBLを眺めてみようかなぁと思った次第なのです。それくらい本書は非常に明快。
そもそも、本書を読むまでPLとBLがどう関係しているのか、何を示しているのかもよくわかっていなかったわけですよ。それがわかっただけでも私にとって本書は価値があります。で、さらに本書が秀逸な点はBLとPLを「金額比例縮尺によるパターン認識」で示していること。タイトルにあるとおり"ドンブリ勘定"を具現化したものがこの比例縮尺図なのですが、これが非常にわかりやすい。ぜひ上場企業の皆様にはこの表を説明資料に含めてもらいたいぐらい。なんたってひと目見れば1年間の稼ぎの状況、そして期末時点の資産状況が明確にわかるのですから(まぁそれがわかってしまうがゆえに企業はこうした表は使いたくないのでしょうが)。
本書ではこの比例縮尺図を使用してなぜ武富士が稼いでいるのか、セブンイレブンの"すごさ"とは何なのか、トヨタという企業の実態、ソニーの台所事情、さらにはソフトバンク楽天を「お金」の面から見た姿などを解説しているのですが、これほど明確に各社の状況が理解できた説明はありませんでした。別に会計士や経理屋さんを目指していない人向けに、ぜひ大学にもこうした面から企業の実態を考えてみるような講座があるといいと思うのですが。
さらに本書ではキャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)がなぜ必要なのかについても解説が展開されるのですが、ここについては「なぜ必要なのか」を明確にするに留めています。PL, BL,そしてCFの各表は何を示していて、どう関係していて、そしてそこから読み取るべきポイントは何なのか。この説明の中ではソフトバンクを例として扱っているのですが、ソフトバンクの特異性というか非常に独特の財務体質は興味深いものがあります。「PLは捨てている」という孫さん流のやり方は非常に独特ですが、財務諸表で実際にそれを見るとより深く理解することができます。
後半では単純化した財務諸表からの読み取り方、そして財務諸表をどう経営に生かすのかという点について書かれています。財務諸表を「どう読むか」、そしてそれを「どう使うのか」、今後はこうした知識や理解を持っていることが必要条件となっていくと思います。