書評ー『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームス・R・チャイルズ/草思社

最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
ジェームズ R・チャイルズ 高橋 健次
草思社 (2006/10/19)
売り上げランキング: 2777

外国版「失敗学」とでもいえる本。
これまで世界で発生してきた様々な事故や未然事故を取り上げ、なぜその事故は発生したのか、そしてなぜ事故となるまで人は対応できなかったのか/事故になるような対応をしてしまったのか、どのように対処したことによって事故を未然に防いだのかを解説している。
起こるべくして起きた事故や、予兆があったにもかかわらず対処されなかったがために発生してしまった事故、様々な小さな要因が結びつくことによって発生してしまった事故など、事故には様々なモデルがある。ただし、本書で取り上げられている様々な事故は災害ではない。様々な人間の判断や選択、思い違いや意識の隔たりなどといった人的要因が事故に結びついている。どこかで正しい判断や選択がなされていれば発生を防ぐことができた事故ばかりである。
システムを過信していたり、手を抜くために正しい手順をふまなかったりなど、問題が発生しない状態がある程度続くことによって現場ではそうしたやり方が「当たり前」になってしまった状態で様々な事故は発生する。
本書で取り上げられている大きな事故に限らず、日常的に発生している様々なトラブルは小さな要因から生じており、そしてそれを防ぐことができたタイミングや発生してしまったとしても最小限の損害で抑えることができたポイントがあるはずである。
そういう意味で、失敗事例から学ぶことは多く、そしてそれは単に学んだだけではだめな実践的学問といえると思う。