SI

SIは儲からない。だから、ビジネスの軸をパッケージソフト販売や運用サービスに変える必要がある----これは、ITサービス会社のビジネスモデル変革の公式と言ってよいだろう。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20060706/242685/
いや、SIは儲かる場合もあるけど儲からない場合も多々あって、しかも製品のように見通しが立てづらい点が仕事としてそれだけをやることにリスクがあるということではないだろうか。
製品や運用のようにコストリスクがある程度見通せて、費用対効果を考えやすい方がビジネスとしては戦略が立てやすいというのはあるとは思う。
SI=狩猟型は当たれば得るものは大きいが、明日も得られるかどうかわからない。
対して農耕型(=ソフトウェアパッケージや運用)は大当たりはほとんどないが、明日も得られるある程度の目処はたてられる。
バランスよく、というのは理想だが狩猟民族が農耕に手を出すことは非常に難しい。狩猟に必要なノウハウと農耕に必要なノウハウは全然違う。どちらもバランスよくこなせればベストだが、どちらもそれなりになってしまったらどちらも立ち行かなくなってしまうだろう。二兎を追うものは一兎も得ずというか、一方のプロフェッショナルが他方でもプロフェッショナルになれる理由はない。

富士通なんかは、ITサービス事業の収益力向上策の説明でこの図を使う。儲からないSIの比率を下げて、パッケージと運用の比率を高めていましょう、というわけだ。他のITサービス会社の多くも、証券アナリスト向けの戦略説明会などで似たような話をしている。ユーザー企業に、ハードやミドルウエア製品と合わせて業務パッケージを売り込み、できるだけカスタマイズなどのSIを減らし、構築したシステムの運用受託にもっていくことで、収益力を高めていく--- -まあ、そんな話だ。

メーカーはたしかにSIは儲からないのでその比率を下げていっているとは思う。もちろん、IBMのようにシステムを売るのではなくサービスを売るという考え方でやっている会社は一定規模のSIはどうしても必要になるとは思うが、それでも全ての社内に抱えることはリスクがあると判断しているからこそ、子会社や関連会社といった協力会社と仕事をするのだろう。

ただ、SIの比率を減らすと言っても、ITサービス会社からSIの仕事がなくなるわけはない。で、どうするのかと言うと、SIではひたすら生産性を向上させ、赤字案件を出さないようにすることで、利益率を少しでも引き上げる地道な取り組みを続けるだけである。

SIで"生産性を向上"させることが難しいという点も、SIがビジネスとして難しい大きな理由だろう。
ソフトウェアのように一定のパッケージ化によって売れば売るほど儲かる仕組みも作ることが出来ないし、運用のようにコストと利益を将来にわたって見込んだ形でビジネスを行うことも難しい。

ただ、こうした古典的なビジネスモデルが、これからもOKかというと話は別だ。もちろん、こうした企業にはプライム企業から下請け企業まで様々なバリエーションがあり、とても十把一絡にはできない。

SIはたしかにビジネスとしてはとても難しい。技術が日進月歩で進歩していくし、ソリューションモデルを作り上げても明日にはどうなるかわからない。昨今のトレンド的な技術ももしかしたら数年したら廃れているかもしれない。
獲物を追い求めて狩猟の道を究めるか、農耕の道に歩みを変えるか…。
どっちも、というのは難しいのだとしたら、会社としても個人としても、どちらの道を歩むべきかは日々考えながら歩んでいく必要があるだろう。