ウェブアプリケーションって、なに?

ウェブアプリケーションは別にブラウザを通じたインターフェイスではなくてもいい。Internetは本来、どんな通信であってもIPで包めば送っても良い仕組みになっている。しかし、現実にはインターフェイスはWebブラウザがほとんどであり、それ以外といえば多少MessengerソフトウェアやSkypeなどのメッセージングツール、Email(こちらもだいぶWebメールになり、インターフェイスがWebブラウザになりつつあるけれども)、FTPツール、そしてP2Pソフトウェアの類いが多少使われている程度だ。「汎用的な」ツールはこの10年以上、Webブラウザだけ。よくも悪くも、これが現実だ。
いい面も多い。
最大のポイントはInternetに接続する「誰もが」ウェブブラウザを当たり前に使えること。その裏でどういう仕組みが動いているのか、今表示されている処理がサーバ側で処理されたものなのかクライアント側で処理されているのかなど関係ない。ウェブブラウザの中に実現されているサービスはどんどんと進化しているが、多くのユーザはそれを当たり前に受け止め、普通に使いこなしている。Webブラウザを「通じて」より様々なアプリケーションが提供されることに何ら違和感を感じない。そして提供する側も、ユーザがウェブブラウザさえ使えればサービスを届けることができるので、「ユーザに使ってもらい、自らのサービスの価値を感じてもらう」垣根が低いので、ウェブブラウザ向けのウェブサービスを誰もが提供しようとする。そのサイクルだ。
ウェブブラウザを通じて提供されるサービスの多くは、サーバ側で処理される。そして、ブラウザをアップデートする訳にはいかないので、当然、サーバ側がアップデートされることによってサービスがアップデートされる。インストールもいらなければ、端末に縛られる制約もない。
これまではこれらのいい面が大きなメリットとされ、急速なまでにウェブアプリケーション=ウェブブラウザを通じたサービスとしてその市場を拡大し、サービスが増加し、そして次第に洗練されてきた。しかし、このままの姿であと10年、ウェブアプリケーションは進化していくことはできるのだろうか?
そして、悪い面も。
ウェブブラウザは本来、ウェブページを表示するためのツールとして登場した。基本的に「受け手」としてつくられたツールなので、必然的に操作性やレスポンス、そもそも「できること」がどうしても限られてしまう。ローカルでは誰もが何も考えずにやっているマウスを使ったアイテムのドラッグ&ドロップすら、ウェブブラウザの中では簡単にはできない。
そのツールから得られるものだけがInternetの世界ではない。ウェブブラウザを起動することだけが、Internetではない。そもそもの話なので、誰もがそのことを忘れてしまっている。
残念ながら、ウェブブラウザ以上に汎用的にInternetの窓口となっているツールを私たちは生み出すことができていない。専用ツールをインストールする必要がある、ということはユーザにとっても、サービスの提供側にとても大きな障壁だ。URLをクリックするだけでサービスにアクセスすることができる簡易性は、様々なデメリットをもっていながらもウェブブラウザをInternetへの窓口であらせ続けている。
ウェブサービスのみならず、OSやウェブブラウザなどの熾烈なシェア争いは、次なるInternetへの窓口(インストールする必要はないものであってほしいと思っているが、インストールしないならどうするのかということはまだわからない)を生み出したものがごっそりと今の状況をひっくりがえしてしまうのではないかと私は思っている。それが明日なのか、1年後なのか、10年後なのかはまだわからないけれども。