VMware vSphere クラスタ構築/運用の技法

Duncan EppingさんとFrank Dennemanさんによる名著『VMware vSphere 5.1 Clustering Deepdive』の翻訳書『VMware vSphere クラスタ構築/運用の技法』が本日23日に刊行されます*1。すでにいくつかの書店では先行販売もされている様です。

VMware vSphereクラスタ構築/運用の技法

VMware vSphereクラスタ構築/運用の技法

本当はもう半年ぐらい早く、本書の日本語版を刊行できていればより多くの方のお役に立てていた気もしますが、とはいえ今であっても十二分に役立てて頂ける内容となっているかと思います。HA, DRSなどのクラスタ技術は今や一般的に知られるものとなり、多くの実運用環境において使用されているかと思いますが、本書をお読み頂ければその裏側の仕組みや、各機能の関連性、各機能を使用する上で考慮すべき事項などについてより深く理解頂けるでしょう。

原著の執筆時点において、著者の2名はいわゆるVMwareの中の人でしたので、外部には公式に公開されていない、もしくは明確にされていない部分についても本書には数多く含まれています。VMware vSphereのクラスタ技術を使うためにはそこまで知っておかなければならないわけではありませんが、知った上で設定することの価値はとても大きいでしょう。特に、仕組みを詳細に正しく理解していることの価値は、設計時やトラブル時により発揮されます。どういう時に、どういう設定をすればよいのか、どこを確認すればよいのか、等々、単に機能を把握しているだけではなく理解しているかどうかはそうした場面での対応にとても役立つと思います。

私は訳者ではなく、レビューを担当するメンバーの一人として本書に携わらせて頂きましたので、刊行前には全ての章をしっかりと読み込んでいたわけではありませんでした。そのため、今、改めて読んでみても初めて知ることが多く書かれています。

VMware vSphereのクラスタ技術についてだけで1冊の本を刊行する、ということは正直かなりのチャレンジである気もしましたが、これだけ仮想化が一般化しつつある中で、仮想化レイヤーにおけるクラスタ技術を正しく理解し、使いこなすことの必要性は高まっており、そうした中で本書はとてもお役に立つことができる内容が盛りだくさんに含まれています。

仮想化技術の進歩は著しく、おそらく今年中には、本書がターゲットとしたVMware vSphere 5.1よりも進歩した、次バージョンがリリースされることになるかと思います。本書において制約事項であったり注意すべき点として扱った部分が改善され、より拡張されていくことも確実でしょう。それであっても、本書に書かれている「機能の裏側にある仕組み」を理解することの価値は薄らぐことはないと思います。

まだ電子版が刊行されておらず、約400ページの大判技術書籍ということもあり、なかなか持ち歩いて読むわけにはいかないかとは思いますが、よろしければ一冊、手元に、仕事場の自席に、本書を置いてご活用頂ければ嬉しいです。

*1:いくつか誤記も確認されております。必要に応じて翔泳社ウェブサイトの正誤表も参照下さい。