FCoEの価値はどこにある?

FCoEは "Fibre Channel over Ethernet" の略称ですので、その名の通り、主にストレージネットワークに使用されてきたFCをEthernetに統合するための仕様/プロトコルです。このあたりのページを参照頂くと、わかりやすい説明が図付きで掲載されています。

Ethernetといっても、標準Ethernet(もしくはClassic Ethernet)ではカバーできないサイズのFCフレームがペイロードとなりますので、単純にタイプがFCoEとなるというだけではありませんが…まぁEthernetとFCを統合するための新しいEthernetだと思っておけばよいかとは思います。

FCoEは仕様としては、Data Center Bridigng (DCB) と FCをNetworkに乗せるための仕様*1の2つから構成されており、DCBはIEEE802.1における3つの仕様*2に基づいています。…なんて書いていてもつまらないので、ざっくり細部を端折って書いてしまうと、Ethernetにおいてロスレスを実現する仕組みを実装した新Ethernetに従来のEthernetとFCoEの両方を流すことによってLANとSANをI/O統合してしまう、という点がウリとされています。まぁもちろんその通りなのですが、私はFCoEを単に経路部分にだけ使用するのではなく、サーバからストレージまでのEnd-to-EndでFCoEを構成することにより、物理的なネットワークを論理的なものとして扱うことが格段に容易になる、という点こそ重要な点といえるのではないかと思っています。

つまり、FCoEを使用することにより、LANもSANもすべて同じ経路を使用することとなりますので、LANの論理的な分割、SANの論理的な構成などはすべてその物理インターフェイス上に構成する論理的なインターフェイスとして構成していけばよいということとなります。LANとSANが分離して構成されている場合は、それぞれの通信をどの物理的な対象に対して構成するか、物理的な組み合わせを意識して必要な対象に対して構成する必要がありますが、FCoEを用いた物理的な接続が構築時に行われていれば、運用開始後の構成変更や追加時にはサーバ、ネットワーク、ストレージのそれぞれの要素において、物理を考えることなく、論理的な設定のみを行えばよいということになります。

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また、よくあるイメージ図として、この図のようにサーバからLANとSANにそれぞれ線が出ているものがありますが、LANとSANがバラバラではなくLANの中にSANが含まれていくようになれば、Storage側のネットワークについてもLAN側のネットワークと同様にいわば上流に繋がった側に構成されることとなりますので、SANの統合やDR構成などといった拡張も次のステップとして描きやすくなっていく点もメリットといえるでしょう。

ところで、FCoEではFCのフレームをEthernetフレームにカプセル化しますので、他のEthernetフレームとの識別にはVLANタグが使用されます。
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Cisco Nexusであれば、FCoEのためのVLANとFCoEによって運ばれるFCフレームのためのVSANを構成し、VLANに対してVSANを紐付けるよう構成します。また、FCoEをマルチホップで伝送するようにも構成することもできます*5ので、FC通信のための論理ポートであるVFC(Virtual Fibre Channel)インターフェイスを構成して経路となるEthernetインターフェイス(もしくは、Port Channelインターフェイスでも可)に紐付けることで、SANスイッチ同士の接続と同じ構成を論理的に定義します*6

CiscoのUCSブレードサーバの場合は、各ブレードサーバからの通信はFabric Extender (FEX)を通じてFabric Interconnect (FI)経由で流れていくわけですが、FIは標準ではLANもSANもエンドホストモードとして動作するように構成されています。SANに対するFIのエンドホストモードでは、NPVを用いて配下の各ブレードサーバのSANインターフェイス(vHBA)ポートのNポートをProxyします。これにより、FI自身はZoningを構成・制御する必要がありませんし、既存のSANへの接続もより容易となります*7

そんなわけで、CiscoがFCoEに拘る理由はもちろん得意なEthernetの世界にFCを引きずり込むためでもあるとも思いますが(^_^;)、サーバであるUCS、さらにはFCoEアダプタのVICまでを自社で提供することによって実現した「物理であっても全てが論理的に構成できるインフラ」のためにはFCoEが欠かせない要素であったから、ともいえるのではないでしょうか。

*1:T11/FC-BB-5

*2:PFC / Priority-based Flow Control (802.1Qbb), ETS / Enhanced Transmission Selection (802.1Qaz), DCBX / Data Center Briding eXchange (802.1Qaz)

*3:http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/switches/nexus5000/prodlit/white_paper_c11-501770.html より借用

*4:http://www.cisco.com/web/JP/news/cisco_news_letter/tech/fcoe/index.html より借用

*5:Version 2.1以降においてサポート、ただし上位側はNexusもしくはMDSである必要がある

*6:サーバ側とストレージ側のそれぞれと接続するネットワーク側のインターフェイスにおいても、VSANのためのVLANをタグ付きで疎通できるよう構成したうえで、論理的なVFCインターフェイスを使ってVSANとの接続を定義します

*7:ただし、仕組み上上位となるSANスイッチではNPIVが有効である必要はあります